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●社会福祉現場実習報告会●
  2005.02.28



2年次に行う「社会福祉現場実習」。この実習は、社会福祉
主事任用資格を取得するためのもの。
福祉事務所や児童相談所などで、相談援助業務の役割を
学びます。

実習後は、班に分かれて事後学習。グループワークにて、
予めテーマを設定。実習体験を通して、テーマに沿って討議
します。

これらをまとめ上げて、実習報告会で発表。
その中で、「利用者のニーズを実現する方法を学ぶ」ことを
テーマとした班の考察を、ご紹介します。

●2年生の社会福祉現場実習 報告書●

T.はじめに
私達、福祉事務所Aグループは、人口45万人未満の市である、K市,N市,T市の福祉事務所でそれぞれ実習を行った。福祉事務所という組織の事は、講義を受けるまで存在すら知らなかったのが正直なところであった。しかし講義を通し、福祉事務所の役割を知るにつれ、自分達が住んでいる地域で「どの様な福祉サービスが展開されているのだろうか」,「どの様な人達が、どの様な理由から福祉サービスを利用しているのだろうか」といった関心を持った。そして、「利用者のニーズを実現する方法を学ぶ」をグループのテーマとして掲げ、共通認識として念頭に置き実習に臨んだ。実習終了後にグループ・ワークを行い、考察した内容を以下に報告する。

〜実習機関,実習生氏名,実習期間〜
 ◎ 
N市福祉事務所 : 2年M.I 2004年9月2日〜9月16日(計11日間)
   ・福祉事務所各課(1日間)
   ・福祉事務所障害者支援課(4日間)
   ・福祉事務所社会福祉課(3日間)
   ・心身障害者福祉作業所(3日間)

 ◎ 
T市福祉事務所 : 2年M.S 2004年9月14日〜10月1日(計11日間)
   ・福祉事務所各課(1日間)
   ・身体障害者デイサービスセンター(3日間)
   ・知的障害児デイサービスセンター(2日間)
   ・精神障害者共同作業所(2日間)
   ・知的障害者デイサービスセンター(3日間)

 ◎ 
K市福祉事務所 : 2年 Y.M 2004年8月23日〜9月6日(計11日間)
   ・福祉事務所各課(1日間)
   ・福祉事務所生活保護課(6日間)
   ・福祉事務所高齢者支援課(1日間)
   ・保育園(1日間)
   ・肢体不自由障害児施設(2日間)


U.福祉事務所とは
グループ・ワークの報告に入る前に、実習前の事前学習で学んだ福祉事務所の概要について触れておく。
社会福祉法により設けられた社会福祉行政の住民に最も近い現業機関である。設置基準(第14条)は、都道府県、及び市区は福祉事務所を設置しなくてはならない。町村は、福祉事務所を設置できるとされている。都道府県福祉事務所は、「生活保護法」,「児童福祉法」,「母子及び寡婦福祉法」,「知的障害者福祉法」に基づき福祉サービスを展開している。また市区町村福祉事務所は、上記福祉法に「老人福祉法」,「身体障害者福祉法」を加えた、いわゆる福祉六法に基づき福祉サービスを展開している。福祉事務所の職員構成(第15条)は、@所長、A指導監査を行う所員(査察指導員,スーパーバイザー)、B現業を行う所員(現業員)、C事業を行う所員を置かなければならないと定められている。また査察指導員,現業員については、社会福祉主事でなければならないとされている。
各班員の実習を受け入れて下さった、N市福祉事務所,T市福祉事務所,K市福祉事務所の組織図、及び各市人口を以下に記す。









V.グループ・ワーク
テーマである「利用者のニーズを実現する方法を学ぶ」に沿って、ニーズを実現する為の福祉サービスを提供するには、どの様な視点を持てば良いのか、実習で経験した事を基に話し合った。実習で各人が学んだ異なる事柄を統合する手法としてKJ法を用いた。その結果を以下に述べる。

1.利用者の実態
@ 生活困窮者
生活困窮に陥り福祉サービスを受けている様々な人達がいた。夫が金銭にルーズな高齢世帯,傷病により就労困難な人,高齢の単身世帯,養護老人ホームの措置入所者,アルコール依存症により就労困難な人,お金を騙し取られた知的障害者,母親が就労に就こうとしない母子家庭などである。実習では、この様な人達と実際に接する機会を得る事ができた。また現業員と利用者とのやり取りを見学させて頂く中で、利用者への理解を深める事ができた。

A 社会的弱者
身体障害,精神障害,知的障害,内部障害などの心身の障害、親の保護を受ける事のできない児童、高齢者など福祉サービスを必要としている様々な人達がいた。年齢は児童から老人までと幅広いものであった。
実習では、ダウン症,自閉症,多動症などの知的障害者(児)、脳卒中後遺症,脊椎損傷後遺症,脳挫傷後遺症などの身体障害者、うつ病,統合失調症,薬物依存症などの精神障害者など様々な人達と接する事ができた。様々な障害の理解を深める事は、対象者との信頼関係を築く為の第一歩であり、適切なサービス提供には欠かす事のできないものであると感じた。

B 健常者
つい忘れがちであるが、福祉サービスを受けているのは必ずしも障害者や生活困窮者だけではなく、私達の様な健常者もサービス受給者となる事に改めて気づかされた。児童がいる共働き世帯、障害者や高齢者を家族に持つ世帯、などなど全ての世帯が対象となる。

C 利用者のニーズ
ニーズは大きく二つに分ける事ができると感じた。利用者自ら(家族も含む)が自覚している主観的なニーズ、そして利用者自身は自覚していないが、生活を送る上で必要となる客観的なニーズである。
主観的なニーズとしては、知的障害を持つ我が子への接し方を学びたい,障害があっても健常児と同じ幼稚園に通わせたい,子育てをしながら仕事がしたい,介護をしながら仕事がしたい,身体が不自由でも自由に外出したい,自分が年老いて動けなくなる前に障害を持つ我が子に自立してほしい,住み慣れた街で生活し続けたい,生活が苦しく生計を維持できない,利用したい時に利用したいだけ使えるサービスが欲しい,健常者に障害を理解して欲しい,障害児を持つ家族だけが大きな負担を負うのは不公平だ,同じ障害を持った仲間がほしい,施設の食事が口に合わない,定年後も仕事をしたい,高齢なので今後の生活に不安がある,など沢山のニーズがある事を実習で学んだ。
客観的ニーズとしては、住民の交流の場が少ない,独居老人の孤独死が増えている,介護家族の負担が大きい,障害者用トイレが少ない,高齢者の交通事故が増えている,要介護者が増えている,保育所の数が不足している,子供の遊び場が減っている,核家族化が進み家庭内に子育ての相談相手がいない,母子(父子)家庭の実態が不明,福祉サービスの認知が低い,一度施設から出ると施設に容易には戻れないので障害者が街での暮らしに踏み出せない,障害者が街で生活する為の社会資源が不足している,防災システムのバリアフリーがなされていない,放置自転車が増え転倒などの被害が発生している,家庭内虐待が増えている,女性が社会に進出しにくい,支援費制度に基づき運営し利用者主体のサービスを提供すると赤字になってしまう,作業所の工賃が低すぎる,雇用主の障害に対する理解が低い,障害者数に対して施設数が少なすぎる,障害者が一般就労に就けないのは健常者が障害を理解していないから,うつ病単身者の自殺防止の見守りが必要,第三者による財産の管理が必要な人がいる,など沢山のニーズがある事を実習で学んだ。

2.サービス提供者
@ 制度とサービス提供機関
福祉事務所内には、各市福祉事務所によって部署名の相違はあるものの、国が定めた「生活保護法」,「児童福祉法」,「母子及び寡婦福祉法」,「知的障害者福祉法」,「老人福祉法」,「身体障害者福祉法」に基づき、サービスを立案し提供する部署が設けられていた。福祉事務所では、住民ニーズを収集し、どの様な福祉サービスを展開していく必要があるのかといった年間計画があり、これに基づいて福祉サービスが展開されていた。福祉事務所の詳しい役割などについては省略する。

A 社会資源
   立案された福祉サービス計画を実行する為の様々な社会資源が存在している事を実習で学んだ。長年地元に住んでいる我々でも知らない社会資源が多く存在する事に驚かされた。我々が普段から耳にしている児童施設や障害者施設などはもちろんの事、私達が普段利用していた弁当屋が配食サービスをしているなど新たな発見もあった。中でも社会福祉協議会には多くの施設運営を委託しており、福祉事務所との強い連携を感じた。
   福祉事務所や関係施設では、利用者に適切な福祉サービスを提供する為に様々な専門職が働いていた。我々が実習で出会った専門職の一例を挙げると、音楽療法士,看護師,介護福祉士,介護支援専門員,保育士,児童福祉司作業療法士,理学療法士,言語聴覚士,精神保健福祉士などである。施設に常駐している専門職から、必要時に病院などの他施設から派遣されてくる専門職など様々であった。また専門職以外にも社会福祉協議会のボランティアセンターから派遣されてくるボランティアの人達などもいた。

3.援助の視点
  実習で職員が利用者と接する姿勢を見て、あるいは話を聞かせて頂く中から、利用者にサービスを提供するには、法に従い漫然と決められた援助を行う事が専門職なのではなく、利用者のより良い暮らしを絶えず追求し続ける事が大切となる事を学んだ。援助の第一歩として利用者との信頼関係を築くには、相手の内面を読み取る洞察力や、コミュニケーション技術が必要になる。どの様な援助を求めているのかを知るには、幅広い視野で多角的に物事を見る必要がる。援助を展開する過程では、様々な社会資源との関係調整能力が必要になる。などである。またその人の出来る事を見抜く能力も必要となると感じた。

4.サービスの提供
  @ 個人へのサービス
   利用者のより良い暮らしを目指し様々なサービスが展開されていた。障害者に対する就労訓練指導や生活訓練指導,機能訓練,リハビリテーション,レクリエーション,金銭や物品の給付など。高齢者に対する趣味活動,健康講座,給食サービス,金銭や物品の給付など。生活困窮者に対する金銭や物品の給付,就労指導,安否確認など。社会的弱者に対する保護,金銭や物品の給付など。その他一般市民を対象にした各種講座や、健康優良者や長生き高齢者への金一封などである。

  A 間接的なサービス
   個人が生活しやすい環境を整備していく事も重要となる事を学んだ。地域福祉の体制整備,福祉サービス主体の育成,住民交流の推進,緊急通報システムの充実,交通安全対策,循環バスの運行,街のバリアフリー化,保育環境の整備,相談体制の整備,母子(父子)家庭の優遇措置,防災体制の強化,社会資源の発掘,一般住民への啓発活動(障害の理解),文化活動の推進,教育の充実,就労の促進と安定,当事者参加の推進,健康増進活動の推進,男女共同参加社会の環境整備などがあった。

5.サービスの効果
  サービスを提供した結果として様々な効果があらわれる。良い効果もあれば、悪い効果もあった。効果はより良いサービスを展開していく為の指標として役立つと感じた。実習で利用者と接する中で、いくつかの効果に触れる事ができた。利用者同士が障害について共感しあっている,趣味活動が楽しみ,生活保護のおかげで生活できている,生活保護から抜け出さなくてはと思っている,安否確認で伺った利用者が楽しそうに話をする,子供達が社会のルールを学んでいる,などの良い効果。障害者が一般就労につきたいと思っても受け入れ先がない,施設が少なくサービスを選択する余地がない,などの悪い効果。その他にも「利用者のニーズ」で述べている事柄がサービスの効果としてあらわれた結果ではないかと考える。

6.グループ・ワークのまとめ
以上のまとめた事柄を基に、テーマである「利用者のニーズを実現する方法を学ぶ」とは一体どの様なものなのか、グループで話し合い概念図(下図)を作成したので説明する。



サービスの対象となる利用者(概念図の@)は、より良い生活を望むニーズがある。どの様な生活を送りたいのか人によって違う様に、ニーズも様々である。またニーズには、本人が気付いている主観的なニーズと、本人は気付いていない客観的なニーズとがあると思う。どちらのニーズも利用者の生活をより良いものにしていく上では無視する事はできない。
サービスを提供する機関(概念図のA)としては、利用者のニーズを把握する事が最も重要になる。またニーズを実現できるだけの基盤を整備していく事も、それと同じくらい重要になる。ニーズは常に変化していくものであり、尽きる事がないものなのではないかと感じた。この常に変化し続けるニーズをいかにキャッチし、新しいサービスを更新し続ける事ができるかが重要になると感じた。現在の制度の中で、これら全てのニーズを満足していく事は到底不可能なのではないか。しかし、その様な中で住民のニーズを満たしていく技術がSW(ソーシャルワーカー)には求められるのだと感じた(概念図のB)。
  そしてサービスを提供(概念図のC)し、利用者が利用した結果として、何らかの効果があらわれる(概念図のD)。良い効果もあれば、悪い効果もある。そして、また新たなニーズが生まれてくる。SWはニーズを拾い上げ、サービスを更新していく。これら一連の作業を絶え間なく展開していく事が重要であり、展開していくだけの技術をSWは兼ね備えていなくてはならないと感じた。


W.まとめ
最後に実習を終えての各人のまとめを最後に記す事とする。

1. 2年 I.M
  
障害者支援課では、心身障害者福祉作業所に行った。ここでは18歳以上の人が通所していた。おもちゃ作りや、靴下のパッキングなどを行っており利用者と一緒に作業を行った。また職員は一人ひとりの出来る事、出来ない事を把握し指導していた。利用者と職員の関わりの様子から、援助者は、利用者個々人の特徴を把握し、その人の出来る事、出来ない事を踏まえた上で援助を展開する必要がある事を学んだ。
社会福祉課では、主に生活保護に関する事を行った。利用者のお宅に訪問し今の生活状況について聞取り調査を行った。ここでは、援助を行っていくには、利用者との関係作りが大切で、利用者と信頼関係を築く為のコミュニケーション技術が必要になる事、また利用者の生活状況や生活歴を把握しておく必要がある事を学んだ。
高齢者支援課では、高齢者宅に伺い救急連絡装置の設置に立会った。また日常生活で困っている事などの聞き取りを行った。援助を自ら求める人にサービスを提供するだけでなく、その人に必要なサービスを、援助職の方から積極的に発掘していく事が大切である事を学んだ。
民生員,福祉事務所職員,介護支援専門員など他職種が集まる打ち合わせに同席した。そこでは、他職種同士の情報の共有方法についての話し合いが行われていた。やはり、一人の利用者に対して、色々な職種が援助を行っていく時は、一つの目標を共有する事が大切になる事を学んだ。
今後の課題としては、施設の設置基準やSWの関わり技法について深め、実習で学んだ事を振り返っていきたい。


2. 2年 S.M
  
福祉事務所において、福祉事務所の役割,機能について講義をして頂いた。生存権に基づいて、あらゆる市民を援助する機関である事がよくわかった。職員においては、法的な知識はもちろんの事、心身の障害の知識や、利用者との信頼関係を築く上で必要となる技術や人間性をも必要とされる事を感じた。
  様々な施設にて実習をさせて頂き、様々な社会資源に直接触れ、社会資源同士の関係や役割を理解する事ができた。また利用者と接する事で、知的障害者(児),精神障害者,身体障害者の抱えるニーズについて知る事ができた。今までの私の人生の中で、精神障害,私的障害を抱える人達と接するのは初めての経験であった。接してみて感じた事は、何か物事を行う面で健常者より劣るのは当然として、障害を抱えていても、障害者一人ひとりが行える事は確実に存在するという事である。障害者が一般社会(就労)に溶け込む事ができない要因は、障害者自信の問題なのではなく、私達健常者の障害に対する理解不足や偏見によるものである事がはっきりとわかった。
  しかし、自分がSWという立場としてどうすれば良いかと考えてみると、その対応が容易ではない事に気づかされた。障害を抱える人達が一般社会に進出する為には、どの様な援助が必要となるのか、漠然とであるが実習後のグループ・ワークを通してみえてきた様に感じた。


3. 2年 Y.M
  
福祉事務所の実習を通して、行政の役割、利用者にニーズを理解する事ができた。福祉事務所の組織は各課にわかれ、行っている事はそれぞれ違うが、共通して言える事は、地域福祉としての助け合いだという事を感じた。子供から高齢者まで福祉を必要としている方々にどの様に対応し接するのか、普段の関わりやケース記録を通し最善策を考え対応しても、利用者のニーズを満たす事は、SWだけでは限界があると思われた。そこで他の人々の助け合い、地域住民,民生員,社会福祉協議会,ボランティア,各福祉サービスの連携が大切であり、支え合うからこそ利用者のニーズが満たされるのだと思った。支え合いを確立する為には、SWが利用者に対して対人援助職として信頼関係の構築を図らなければならない。その為にSWスキルを高めなければならないと思った。


 最後に、今回の社会福祉現場実習を受け入れて下さり御指導頂いた、N市福祉事務所、K市福祉事務所、T市福祉事務所の皆様、並びに各施設職員の皆様。様々なアドバイスを下さった社会福祉現場実習講師の畠山先生に心から感謝を申し上げます。

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学校法人松山学園 松山学園松山福祉専門学校 (厚生労働大臣指定 介護福祉士養成施設・社会福祉主事養成機関)
取得資格:介護福祉士・社会福祉主事任用資格・日赤救急法救急員・レクインストラクター・健康環境管理士
専修学校認可:平成2年1月31日
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